薄明薄暮性と“昼間型”の現実
クマは「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」と呼ばれる。
夜明け前と夕暮れ――つまり薄暗い時間帯に最も活発に行動する生き物だ。
これは環境省の『クマ類の出没対応マニュアル(2021)』にも明記されている定説である。
登山者にとっても、早朝の入山や夕方の下山はまさにその時間帯。
「音を立てて歩く」「鈴を鳴らす」といった基本的な行動が推奨されるのは、
この習性を踏まえたリスク回避策だ。
しかし――現実は少し違う
2025年の9月〜10月に発生した
全国の重大なクマ被害(死亡・重傷)を調べると、
多くが 朝〜昼の時間帯 に起きている。
| 月日 | 時刻帯 | 都道府県 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 10/3 | 13時半頃 | 宮城県栗原市 | キノコ採り中の2人死亡 |
| 10/16 | 9時頃 | 岩手県北上市 | 温泉清掃中の男性死亡 |
| 10/22 | 7時半頃 | 福島県会津美里町 | 民家前で夫婦重傷 |
| 10/24 | 11時頃 | 秋田県東成瀬村 | 農作業中の男性死亡・3人重傷 |
| 10/27 | 10〜11時頃 | 岩手・秋田 | 同日2件の死亡事故 |
今のところ「夕暮れの事故」は確認されていない。
従来の「薄明薄暮=危険時間帯」という認識だけでは、
もはや安全を守れない状況が見えてきた。
クマの行動が変わりつつある
なぜ、日中の被害が増えているのか。
その要因はまだ断定できない。
ただ、以下のような仮説は立てられる。
- 山の実りが減り、人里での採餌時間が延びている
- 個体数の増加で、活動領域と時間が重なっている
- 人間の側も早朝活動(登山・農作業など)を続けている
つまり、森と人の活動リズムが重なり始めている。
「時間帯で避ける」だけの対策では限界に近いのかもしれない。
まとめ
- クマは本来「薄明薄暮性」だが、
2025年秋の被害は 朝〜昼間型が中心 - 今のところ「夕暮れの事故」は確認されていない
- 早朝・午前中の登山や農作業でも警戒が必要
- 行動時間の“重なり”が新たなリスクを生んでいる
クマは人を狙っていない。
だが、偶然が重なれば事故になる。
行動時間を知り、慎重に距離を取る。
それが、これからの「共存」への第一歩だと思う。
📘 参考
環境省『クマ類の出没対応マニュアル(2021)』
各県報道資料・2025年人身被害報道より作成

コメント