人を覚えたクマ ― 変わる攻撃性の正体
2025年。
クマの行動に、これまでとは違う“質の変化”が現れている。
出没や威嚇ではなく、「人を襲い、食べた」という報告が相次いでいる。
これは一過性の異常ではなく、
人間社会との接点が広がる中で起きている学習行動の段階と考えられる。
従来のツキノワグマ行動との違い
| 分類 | 従来型(防衛的) | 新型(学習・捕食的) |
|---|---|---|
| 行動目的 | 子を守る/驚いて攻撃 | 食料・興味・執着 |
| 攻撃の持続性 | 一瞬で離脱 | 長く執拗に追う |
| 発生場所 | 山中・藪・出会い頭 | 住宅地・人里・施設周辺 |
かつてのクマは臆病で、人を避ける傾向が強かった。
しかし近年、「人の存在を恐れない」個体が確認されている。
それは防衛行動ではなく、目的をもった接近行動。
つまり、「防衛」から「捕食」への質的転換が起きつつある。
学習性攻撃 ― “人を覚えたクマ”
専門的には「学習性攻撃(learned predation)」と呼ばれる。
クマが次のような経験を経て、人への接近・襲撃を強化していく過程だ。
- 偶発的に人を襲撃し、血や肉の匂いを知る
- 恐怖よりも興味・報酬の記憶が残る
- 「人=餌が得られる存在」として認識
- 再び人に接近し、行動を強化する
学習個体が駆除されずに残ると、行動パターンが地域に拡散する危険がある。
また、警戒心の薄いメスがこの特性を持てば、子にも同様の傾向が引き継がれる可能性がある。
実例:変化を示す3つの現場
- 岩手県北上市・瀬美温泉(10月16日)
露天風呂の清掃中、男性従業員がクマに襲われ死亡。
駆除個体の胃から人の遺体片が見つかり、DNA一致。
→ FNNプライムオンライン - 岩手県北上市・和賀町(10月19日〜26日)
周辺で相次いで3人がクマに襲われ死亡。
いずれも住宅地や道路沿いなど、人里での襲撃。
→ 河北新報オンライン - 秋田県秋田市雄和萱ケ沢(10月28日)
田んぼ脇の側溝で女性が遺体で発見。
現場近くにクマの足跡が残され、襲撃の可能性が高い。
→ TBS NEWS DIG
これらは共通して、
- 人里や住宅地など人間活動圏で発生
- 1回限りでなく連続・反復的に出没
- 一部は遺体損壊やDNA一致など「捕食的痕跡」あり
という点で、従来の防衛的襲撃とは明確に異なるパターンを示している。
対策の考え方
| 段階 | 状況 | 有効な対応 |
|---|---|---|
| 通常出没 | 餌を求めて山を降りる | 行動時間の調整・音を出す |
| 警戒減退 | 人里への慣れが進む | 電気柵・臭気対策・追い払い強化 |
| 学習・捕食段階 | 人を襲い再出没 | 個体特定と速やかな駆除 |
“クマ全体を敵視する”のではなく、特定個体を的確に排除する管理が求められる。
それにより、他個体への学習拡散を防ぐことができる。
結論:クマ問題は「量」から「質」へ
2025年のクマ出没は、単なる“数の増加”ではなく、“行動の変質”が根底にある。
それは自然の異常ではなく、人間の生活圏の拡大と、距離の喪失がもたらした結果でもある。
いま必要なのは、恐怖ではなく、冷静な線引きだ。
クマ全体を敵にせず、
人を覚えたクマを見極めること。
それが、共存を守るための現実的な一歩となりそうだ。
参考資料・出典
- 環境省『クマ類の出没対応マニュアル(2021年)』
- 日本ツキノワグマ研究所・米田一彦理事長 各種コメント(報道)
- FNNプライムオンライン「岩手・瀬美温泉で従業員死亡」(2025.10.16)
- 河北新報「岩手県北上市でクマ襲撃3人死亡」(2025.10.25)
- TBS NEWS DIG「秋田市雄和で女性死亡」(2025.10.28)

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