クマの危険を“前提として生きる”年になった
2025年のクマ被害を振り返ると、
一見すると「やはり被害が多かった年」という言葉でまとめられそうに見える。
出没は多く、
人身被害も各地で相次いだ。
だが、数字と経過を丁寧に見ていくと、
2025年はそれだけでは説明できない年だったことがわかる。
想定されていた「危険な年」
2025年が危険な年になることは、
実は2年以上前から見通されていた。
- 2022年の木の実豊作
- 2023年の出産増
- 2025年に若グマが成獣化
- 一部地域での凶作
- 人里依存が進んだ個体の存在
これらが重なれば、
出没件数と人身被害が増えるのは、自然な帰結である。
実際、環境省の速報値でも、
2025年は出没・被害ともに高水準で推移した。
この点について、異論はない。
それでも、11月は「最悪」にならなかった
注目すべきは、11月の結果である。
俗に11月は、
「年間で最も被害が大きくなりやすい月」と言われてきた。
10月までの被害状況を見れば、
「11月はさらに死者が増えるのではないか」
そう感じた人も多かったはずだ。
しかし、結果として
11月の死者は1名にとどまった。
出没が減ったわけではない。
危険が消えたわけでもない。
それでも「最悪」には至らなかった。
クマが変わったのではない
この結果を、
「クマがおとなしくなった」と捉えるのは適切ではない。
2025年には、
- 朝から昼にかけての被害が相次いだ
- 人里や住宅地での襲撃が増えた
- 防衛行動では説明しきれない事例も確認された
つまり、
クマの行動はむしろ厳しさを増していた。
それでも致命的な事故が抑えられた背景には、
人の側の変化がある。
「出る前提」で行動するようになった
2025年は、各地で次のような行動が見られた。
- 早い段階からの注意喚起
- 「11月は危険」という知識の共有
- 山だけでなく、人里・作業場・集落での警戒
- 行動時間や場所を見直す判断
これは、
「クマが出たら対応する」という姿勢ではない。
クマが出る前提で、生活や行動を組み立てる
という姿勢への転換である。
その積み重ねが、
11月の被害を一定程度抑えた可能性は高い。
2025年は「前提が更新された年」
整理すると、こうなる。
- クマ被害は多かった
- 出没も危険度も高かった
- それでも、最悪は回避された
2025年は、
クマが危険になった年
ではなく
クマの危険を、生活の前提として織り込んだ年
だったと考えたほうが、実態に近い。
「冬になればいなくなる」
「時間帯を避ければ大丈夫」
そうした、これまでの“曖昧な安心”が、
静かに更新された年でもある。
問題は、終わっていない
もちろん、
クマ問題が解決したわけではない。
- 冬眠しない個体
- 人里で学習したクマ
- 翌年も同じ場所に戻る可能性
これらのリスクは、
2026年以降へ持ち越される。
2025年は、
解決の年ではない。
向き合い方が一段階変わった年
それが、この年の正確な位置づけだと思っている。
おわりに
恐怖を煽ることは、
解決にはつながらない。
だが、
「知らなかったこと」に戻ることもできない。
クマの危険を、
日常の前提として理解する。
2025年は、
その地点に、社会が一歩進んだ年だった。

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