剱岳の孤独と贅沢なひととき

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2022年9月5日、僕はついに剱岳に向けて出発した。この山に挑戦することは、今年の最大の目標だった。7月に日帰りで槍ヶ岳に登って以来、「剱にも挑戦したい」という気持ちが心の中で膨らんでいた。剱は槍とはまた違った難易度と魅力を持つ。事前に調べたネットの情報やYAMAPの記録では、「剱は槍よりも厳しい」という意見が多く見られたが、むしろその言葉が挑戦心に火をつけた。

早朝4時からのスタートを計画していたが、馬場島に到着した時にはすでに5時20分を回っていた。腹痛に見舞われ、キャンプ場のトイレに駆け込むことで出発が遅れた。結局5時45分にようやく登り始めることに。予想外のスタートに少し焦りを感じつつ、暗くなる前に下山できるかという不安も心に影を落とした。

名物の石碑
標高の目安
富山の町や海が見える

剱岳の登りは開始早々、急な登り坂が容赦なく続く。足を進めるたびに心が折れそうになったが、どこか「これこそが剱だ」という妙な納得感もあった。

早月小屋でひと休みし、持参したオニギリを食べた。ここから先はさらに岩場が増え、スリリングな道のりが続く。ヘルメットを装着し、岩肌に手をかけては上を目指す。「ここを越えれば、あの映画で見た剱岳の頂上に立てるんだ」という思いが原動力になった。登っては振り返り、目指す頂きを仰ぎ見ながら、心が折れそうな瞬間を耐え続けた。

鎖場が増える
鎖と足置きが頼り
頂上の示す方へ進む

ようやく11時半頃、山頂に到達した。目の前には壮大な景色が広がり、剱岳を独り占めする贅沢な瞬間が訪れた。そこでパンとオニギリを広げ、景色を眺めながら1人で食事を楽しんだ。誰もいない山頂での食事。こんな贅沢が他にあるだろうか。山々が連なる風景を前に、僕はしばし無言の時間を過ごした。

山頂の祠
山頂からの景色

しかし、贅沢な時間は次第に不安へと変わっていく。誰も来ない山頂に心がざわめき始める。ふと、「もし暗くなるまでに下山できなかったら」とネガティブな考えが頭をよぎった。急いで装備を整え、下山を開始した。

岩場でスピードを出すことはできず、足元の安全を確かめながらゆっくりと進む。途中で登ってくる人とすれ違い、「まだ自分の後ろがいたのか」と一瞬安堵したが、やがてその人に抜かれてしまった。自分が最後尾になる不安を払拭するように気合を入れ直し、下山のスピードを上げた。早月小屋で小休止し、コーラで渇きを癒しながら、「これはマラソンだ」と自分に言い聞かせて足を進めた。

景色は素晴らしい
下山も鎖場はゆっくり
コーラで回復

16時15分。予定よりも遅れたが、なんとか明るいうちに無事下山できた。膝の痛みをこらえながらも、槍ヶ岳での経験が役に立ったと感じた瞬間だった。剱岳は槍とはまた違う山の厳しさを教えてくれたが、それでも達成感は格別で、目標を一つ叶えた自分に、静かな満足感が訪れた。

後から振り返ると、剱岳への挑戦には槍との「比較」が常に存在していたように思う。ただ、それを超えた時、自分が一歩成長したことを感じられた。

早月尾根からの剱岳(日帰り) / ふみさんの剱岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

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