登山日:2022年9月30日
ジャンダルム。その名前を聞いたとき、心の奥底で何かがカチリと動いた気がした。白山の山頂から見た雄大な景色、槍ヶ岳の鋭いピーク、剱岳の岩壁。それらすべてが、自分の中に「もっと先へ行け」という声を呼び起こしていたのだろう。そしてその声が、このジャンダルムという特別な存在に僕を導いた。
9月30日、天気は快晴。空はどこまでも青く澄んでいて、今日という日が運命的であることを予感させた。深夜23時にあかんだな駐車場に到着し、仮眠をとった後、5時半発のタクシーに乗り込む。車内には僕を含め5人の登山者がいたが、どうやら僕以外の4人は涸沢を目指しているようだった。きっとテント泊の計画を立てているのだろう。彼らが比較的余裕のある顔をしているのに対し、僕は日帰りという時間的制約の中で、この挑戦の緊張感を一人抱えていた。



上高地に降り立ったのは6時前。まだ薄暗さの残る道を岳沢小屋へ向かう。ここまでは穏やかなトレイルで、山への緊張感を徐々に高めていくようなプロローグだ。しかし、岳沢小屋を過ぎると空気が一変する。天狗沢のルートは浮石だらけで、踏んだ石が滑ることは何度もあった。後ろの近いところに登山者がいる場面もあり、「ラーク!」という落石の声が響くのを数回耳にした。この緊張感の中で、ただ前に進むことだけに集中する。



そして、天狗のコルを越えた先にそれはあった。ジャンダルム。目の前にそびえるその岩峰は、写真で見た以上に荘厳で、美しい輪郭を描いていた。頂上に立つ天使のプレートが陽光に輝き、僕を出迎えてくれるかのようだった。その瞬間、これまでの苦労が一気に報われる。まるでこの天使が、「ここまでよく来たね」と言っているかのようだった。
ジャンダルムの頂上では、自分の中にある達成感と安堵感が静かに混ざり合う。それは白山、槍ヶ岳、剱岳と続けてきた挑戦の延長線上に、ひとつの区切りをつける感覚だった。そして同時に、また次なる挑戦へと心を向けるきっかけでもあった。


その後、ウマノセを越え、奥穂高岳へ進む。ここで初めて周囲の登山者たちと軽く言葉を交わす。この山頂はどっしりとした存在感があり、ジャンダルムを背景にすることで、さらにその価値を高めているように思えた。
しかし、感慨にふける時間はそう長くない。バスの最終便が僕を待っている。奥穂高から重太郎新道を下り、岳沢小屋を経由して上高地までのラストスパート。時計を見るたびに焦り、足を速めるが、鉄梯子や鎖場がそれを阻む。「焦らず慎重に」という言葉を自分に何度も言い聞かせながら進む。
岳沢小屋を過ぎ、河童橋が見えたとき、時計は16時42分を指していた。僕は息を切らしながらバス停に駆け込む。そして17時発のバスに、ギリギリ間に合った。最後の猛ダッシュはまるで山の試練の一部のようで、僕はそのすべてを受け入れた。
ジャンダルム。この場所は、ただのピークではない。そこには挑戦、達成、そして新たな自分との出会いがあった。登山者にとって、この「天使のいる場所」は、目指すべき到達点であり、次なる夢を描く原点でもあるのだ。
日帰りジャン[岳沢ダイヤモンド] / ふみさんのジャンダルム・奥穂高岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

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