冬の赤岳挑戦記 ~撤退から掴んだ頂~

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赤岳。標高2899メートル、八ヶ岳の主峰であり、冬山登山者にとって特別な存在だ。その美しい山容と厳しい条件に心を惹かれ、僕は挑戦を決めた。


初めての挑戦、そして撤退

2024年3月2日、僕は八ヶ岳山荘の駐車場から赤岳を目指して歩き始めた。駐車場にはすでに多くの車が並び、冬山登山の人気ぶりを改めて実感した。軽アイゼンを装着して暗い中を出発し、早朝に行者小屋へ到着。ここで12本爪のアイゼンに履き替え、ピッケルを握りしめ、いよいよ文三郎尾根に挑んだ。

しかし、文三郎尾根の厳しさは予想以上だった。雪に覆われた急登は体力を削り、心が折れそうになる瞬間の連続だった。前日の深夜に八ヶ岳山荘へ到着し、車中泊をしたものの、寒さでほとんど眠れなかった影響がじわじわと体に響いていた。行者小屋を通過してさらに高度を上げていく中、体力も気力もどんどん失われていった。

文三郎尾根の途中で、僕は立ち止まった。目の前にはまだ続く急登があり、その先に赤岳がそびえ立っている。「今日はこれ以上進めない」と撤退を決意した。無理をして進むことは危険だと判断したのだ。

下山しながら、赤岳の美しい山容が視界に広がるたびに、苦しさと悔しさ、そして憧れが混ざり合う感情が胸を占めた。それでも、不思議なほどにその姿はただただ美しく、僕の心に深く焼き付いた。こんなに辛い気持ちの中で、どうしてこんなにも美しいと思えるのか、その理由はわからなかった。ただ、あの時の赤岳は僕にとって特別だった。

文三郎から赤岳を見つめる
美しい山容だ

雪山講習で得たもの

赤岳への挑戦に向けて、僕は少しずつ雪山の経験を積み重ねてきた。武奈ヶ岳や荒島岳といった雪山を歩き、雪の急登や冷え込みに体を慣らしてきた。そして、木曽駒ヶ岳で行われたアイゼン・ピッケルワークの講習への参加が、僕の雪山スキルを飛躍的に向上させた。

この講習では、アイゼンの正しい使い方と滑落停止姿勢を徹底的に学んだ。それまでピッケルは「持っているだけの道具」だったが、この講習を経て「命を守るための武器」としての重要性を理解した。急斜面や氷雪のルートでの歩き方を体得したことが、自信となって次の挑戦に繋がったのだ。


2回目の挑戦、念願の登頂

撤退から1週間後、天気予報を確認すると3月10日の八ヶ岳は晴天が予想されていた。この絶好の機会を逃す理由はどこにもなかった。僕は十分な睡眠を取り、早朝に八ヶ岳山荘へ向かった。

午前5時前、駐車場に到着。軽アイゼンを履き、ヘッドライトを点けて暗い中を歩き始めた。行者小屋に着くと、気温はさらに下がり、手足が冷たさで痛むほどだった。ここで12本爪のアイゼンに履き替え、ピッケルを持って再び文三郎尾根に挑む。滑落停止の手順を頭で繰り返しイメージしながら、一歩一歩慎重に進めた。

行者小屋の手前から見える赤岳
文三郎尾根を歩く人たち
表示が雪に埋もれる

文三郎尾根の急登では、前回と同じ厳しさを感じたが、体調は良好で、心の余裕もあった。山頂手前の鎖場では高度感があり緊張したものの、講習で得たスキルが僕の足を支えてくれた。そしてついに、赤岳の山頂に到達した。

山頂に立った瞬間、前回撤退したときの赤岳の姿が脳裏に蘇った。あの時、苦しさの中で見た赤岳の美しさが、今、目の前の景色と重なった。「こんなに辛い思いをした山の頂が、どうしてこんなにも美しいのだろう」と胸が熱くなった。白銀の世界の中にそびえる富士山、その雄大な姿が目の前に広がり、ただただ感動で体が震えた。撤退を経験したからこそ、この瞬間の喜びは何倍にも膨らんでいた。

富士山に見惚れる

下山とこれから

下山は行者小屋を経て赤岳鉱泉ルートを選んだ。赤岳鉱泉は冬も営業しており、多くの登山者が集う場所だ。その賑やかな雰囲気の中で休憩を取りながら、僕は雪山の奥深さにますます魅了されている自分に気づいた。

今回の赤岳挑戦は、僕にとって多くの学びと達成感をもたらしてくれた。一度撤退したからこそ、登頂の喜びはより一層大きなものとなった。そして今、僕は雪山のレベルをさらに上げたいという新たな目標を持っている。赤岳で得た経験を胸に、これからも挑戦を続けていきたいと思う。


Re赤岳[八ヶ岳] / ふみさんの赤岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

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