登山日:2023年11月9日
常念山脈の主峰は常念岳だ。それは疑いようのない事実だし、誰もが認めるところだ。

だから僕もてっきり、常念山脈の最高峰も常念岳なんだろうと思っていた。しかし、実際には違った。常念山脈の最高峰は大天井岳(おてんしょうだけ)だった。そう知ったとき、まだ見ぬその山への興味がふつふつと湧いてきた。行かずにはいられない、そんな気分だった。
11月7日。北アルプスの一部の山小屋が閉まり始めるこの時期なら、中房温泉の駐車場も少しは空いているだろうと期待し、僕は車を走らせた。中房温泉の駐車場が普段どれだけ混むかはよく知っている。登山口までたどり着いても、結局、穂高駅まで戻ってバスを使う羽目になるケースだってある。それを考えると、今回は好機だ。
夜の1時、安曇野市営第一駐車場に到着した。予想通り、駐車場には十分な空きがあった。5割程度の埋まり具合だろうか。車中で仮眠をとり、2時40分、暗闇の中をヘッドライトの明かりを頼りに登山を開始した。



ナイトハイクはこれが初めてではない。それでも暗闇の中を歩くときの独特の緊張感には慣れないものがある。静まり返った登山道で一人きりという状況は、どれだけ経験を積んでも心の奥をざわつかせる。それでも順調に歩を進め、5時半には燕山荘に到着した。山荘の前から見た槍ヶ岳は、近い。これまでいくつもの山から槍を眺めてきたが、ここからの槍はその存在感がまるで違う。雪をまとったその姿は、まるで孤高の剣士のようで美しかった。
燕岳のピークはすぐ近くだったが、僕は進路を大天井岳に向けた。目指すべきはそこだ。表銀座コースをたどりながら、右手には北アルプスの山々、左手には朝焼けが広がる稜線を歩いた。冷たい風が頬を叩き、途中でバラクラバを取り出して着用した。寒さは確かに厳しいが、その分、稜線上の空気は澄んでいて気持ちよかった。


8時20分、大天井岳に到着した。山頂付近には雪があり、チェンスパを装着してのアタックだった。静寂の中で広がる景色を独り占めする贅沢。大天荘では小屋じまいの作業が進んでおり、冬が近づいていることを実感した。


折り返しからは、体力が一気に削られていった。睡眠不足が効いていたのだろう。疲労感が全身を包み、登山靴を進めるのもひと苦労だった。それでも燕山荘に戻ると、温かいカレーが僕を迎えてくれた。カレーの香りとストーブの暖かさに救われる。パワーを取り戻した僕は、燕岳のピークへ向かい、ついにその頂にも立つことができた。



下山は14時50分。車に戻る頃には体力はほとんど尽きていたが、心は満ち足りていた。稜線上で見た槍ヶ岳、表銀座の道のり、そして常念山脈最高峰の大天井岳。その全てが、僕にとって大切な記憶となった。
大天井岳[中房から常念山脈の最高峰へ] / ふみさんの燕岳・大天井岳(長野県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ

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